生もの

洗濯機の上でねぎが干からびている。腐らないだけまだありがたいもので、これが袋入りのほうれん草ならば、土がついている部分から水っぽく腐っていって、汚いな、と思う。色が変わったり、味が変わったりして、思い通りに保存ができない。生きている人間も、生ものなので、すぐに変質する。

容姿や声色といった、変化に長い年月を要する部分ばかり外界に露出をしているから、一年前のあの人と、一年後のあの人と、まるで同じもののように見えるのだけれど、実は全然違っていて、その全然違う断片と断片とをうまく繋げられないと、裏切られたような気持ちになってしまう。人によって、いろいろな形になっていく。腐るのに時間がかかる人も、生まれ変わるのが素早い人もいる。私はとっても足が速くて、それが、寂しい。過ぎ去った旬を廃棄。

物を贈ることの意味はきっと、「大切にしやすいから」なのではないかと思う。変質しにくいから、腐りにくいから、人と違って、大切にしやすい。つまり、大切にしても、後から裏切られるような気持ちになりづらい。

日々流動する物を、変わらずに大切にしていくのは難しい。それをひとつ貫くために、いろいろな物を無傷で手放していけるほど器用ではないから、初めからなにか、変質しやすい物を持つことは諦めたほうがいいのかもしれないな、と思う。